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中央病院放射線科の鈴木です。 医療裁判に関して、 下記のブログを発見しましたので、 ご報告します。 「亀田訴訟」なるものを 理解していませんでした。 報道された「カテーテル挿入ミス」 だと思っていました。 そうでは無かったことが、 詳しく検証されていました。 医療系ブログに関わっておられる方の記事ですから、 まったくの素人ではないのでしょうが、 一般の方でも、こういう記事を書かれ、 医療者の意図を正しく受け取って下さるわけで、 報道の仕方、啓蒙の仕方も重要なのだと 感じました。 ************************** 亀田訴訟、国民は怒るべきだ http://lohasmedical.jp/blog/2008/02/post_1088.php#more 東大医科研で 亀田テオフィリン訴訟の事例を医学的に検討する オープンカンファレンスが開かれたので傍聴してきた。 素人なりに非常に勉強になったのと こんな司法を放置していたら国民は大いに困ると思ったのと 司法内部では、どう考えるのか知りたいと思ったのと。 くだらない感想は置いて、報告を始める。 主催の上昌広・東大准教授の挨拶で開始。 「今回は医療裁判の問題を取り扱う。私どもの研究室は医療紛 争の問題を研究している。きっかけは福島県立大野病院事件。 事例ベースで検討したいということで、今回は亀田病院で高裁 判決まで出ているものを扱いたいということで亀田病院の方々 にお願いして、このような場を設けさせていただいた。 患者さんのニーズが高まり一部で軋轢が生じている。どうやっ て円満に解決させるか。今までは裁判しかなかったけれど、裁 判では絶対的な対立関係になってしまうのでお互いに満足度が 低いとか、医学的事実と法的事実が食い違うとか、いくつか問 題が指摘されている。今回に関しては法的探求と医学的事実と の間にどのような乖離があって、どう埋めていくべきか検討し ていきたい」 司会は中川武正氏 (和歌山・川添診療所所長、前聖マリアンナ医科大学教授) まずは、本島新司・亀田総合病院呼吸器アレルギー科部長が 事例の流れを報告。 「2001年1月1日に起こったある種の事件についてご報告 したい。患者さんは亡くなって、2007年12月13日に東 京高裁判決が出ており、病院側が負けている事例だ。判決上で 争点となっていることを判決文から引く。 ・穿刺部位より約3cm頭側で静脈を損傷し、カテーテルが静脈 外に留置されている可能性が高い。 ・鼠径部に挿入されたカテーテルの先端が、動脈血管を損傷し た蓋然性が高い ・前記動脈血管等の損傷による後腹膜の出血が、出血性ショッ クの原因であった ・(メモ漏れ)血液凝固異常は、血液吸着の施行にあたって抗 凝固剤の使用が不適切であったため?(メモ漏れ) ・死亡原因に・・・テオフィリン中毒がこれに影響を与えたこ とを認めるに足りる的確な証拠はない と、いうあたりが判決の判断になっている。 午前4時30分に悪心嘔吐で救急外来に歩いて受診。 当直医がたまたま患者さんが入院していた時に知っていたため 思い付きでテオフィリン濃度を測定し、中毒に気づいた。 他の医師であれば、おそらくノロウイルスやロタウイルスの 消化器感染症と考え、補液などだけして帰宅させたと思う。 判決文のように誤った穿刺が死亡原因であるなら テオフィリン中毒の診断をつけずに帰宅させていれば 死亡しなかったことになる。さて、いかがなものか。 この患者さんは3歳のころから当院を受診されていて 2000年にも3回入院している。 テオフィリンの治療濃度はガイドラインなどによると 5〜15マイクロg/mlで 直前の入院中に計った時は大体よい濃度だった。 ところが、この日に計ってみたら突然103.5。 その後、検査室にストックしてあったものを調べたら 12月11日以降は、ほぼ血中濃度がゼロ。 12月4日まではきちんと内服していたけれど それ以降、内服していなかったと思わざるを得ない。 血中濃度が突然高くなったのは真相は分からないが ある程度まとまった量を飲んだとしか考えられない。 計算してみると、少なくとも45錠を一度に飲んだことになる 。 (この時の処方量は1回6錠) 血中濃度が判明した後、午前8時ごろ私に電話があった。 どうしたらよいかというので血液吸着を行うべきだ 腎臓内科に依頼しなさいと答えた。 担当医はご丁寧につくばの中毒センターにも問い合わせて 同じ回答を得ている。 脱水治療のために点滴を開始した後、腎臓内科に依頼 9時20分には活性炭で胃洗浄を行った。 その洗浄液には血液が見られたとカルテに記載がある。 午後2時23分に吸着を開始。 この間、ずいぶん時間が空いているじゃないかという 意見もあるだろうと思うが これは純粋にマンパワーの問題。 1月1日という1年で最も人数の少ない日だったため 透析センターを動かすギリギリの人数しかいなかった。 午前の透析が終わってからでないとできなかったということ。 血液吸着を始めるとカラム内で2回凝血した。 最初は抗凝固剤としてフサンを使用した。 2回目はヘパリンを用いた。 最初にフサンを用いたのは テオフィリンは胃酸の分泌を亢進させることが知られており テオフィリン中毒の剖検例では大量の消化管出血を認めた例が ある しかも胃洗浄で血液混じりの回収液があった。 このため最初から多い量のヘパリン投与は危険と考えたようだ 。 血中濃度は62.88まで下がった。 これは単に半減期で下がったのではなく吸着療法の効果と思う 。 できれば40位まで下げたいということで 透析をしようと準備していた午後4時20分に 全身痙攣を起こしてしまった。 ここで挿管して人工呼吸器に乗せて 午後4時45分に鼠径部から問題のカテーテルを挿入した。 この際、カテーテルが血管内に留置されているか確認するため 注射器を引いたところ、血液の逆流は確認できたものの その血液が注射器の中ですぐに固まった。 すぐ直後に膀胱からも肉眼的血尿が認められるようになってお り 先ほどの血液吸着の時と併せて同時に3カ所で凝固異常が起き ている。 カテーテルの挿入時には既に凝固異常があったと確信している 。 鑑定の中には、吸着の過程で凝固を生じたことが 全身の凝固異常の引き金になった すなわち活性化された凝固因子が全身に流れ込んだのが原因 というようなことも書かれていたものがあったが それは理論上はありうるのかもしれないが そんな実例は見たことも聞いたこともない。 膀胱カテーテルから肉眼的血尿を生じ最後まで止まらない。 痙攣によるミオグロビン血症だったのでないかとの意見もある が CPKは563に過ぎない。 ヘモグロビンの低下を考えると総出血量は少なくとも3リット ル以上で 後腹膜内に溜まった分だけでは済まず膀胱からの失血も大きい 。 この際にヘパリン5000単位を投与している。 カテーテルから引いた血液がすぐ凝固したことから考えて 異常な凝固亢進が起きている。 大きな凝血塊が肺動脈に詰まれば頓死してしまう。 エコノミークラス症候群と同じだ。 これを予防するためにヘパリンを投与した。 これによって出血が止まらなくなるか、だが 肺血栓側塞栓症の治療では体重×80単位を静脈投与した後 1時間あたり体重×16単位を投与することになっている。 この患者さんにあてはめると 最初に4400単位と1時間あたり880単位なので 5000が非常に多い量とは言えない。 午後6時12分に脳出血、肺塞栓症の有無を確認するため 胸部・腹部CTを撮影。 脳出血も肺塞栓もなかった代わりに 後腹膜内に出血していることが分かった。 入院時14あったヘモグロビン濃度も6.4まで下がった。 このため輸血をオーダーするとともに 循環血液量を保つためアルブミン、ヘスパンダーの輸液を開始 。 その量およそ9リットル。 ここで判決の中で最大の問題になっていたカテーテルがどこに 入っていたかにかかわってくるのだが もし鼠径部のカテーテルが静脈外に出ていたのなら 輸液したものは全部後腹膜内に出てしまったことになり 剖検時に溜まっていた2リットルとは合わない。 判決中では上腕からも入れていたので どちらからどれだけ入ったか分からないと言うが 上腕の針は20Gであり、カテーテルの14Gと比較すると 内腔断面積の比は1:4.5。 入った液の量もこの比率になるはず。 輸血まで含めると鼠径のカテーテルから9リットルは入ってい る。 この一つだけ見てもカテーテルが血管外にあるはずがない。 またCTで見ると穿刺部の3cm頭側に造影剤の出血が見えるの だが これは濃度から見て動脈由来だ。 かなりの勢いで吹き出している。 穿刺からCT撮影まで1時間20分。 穿刺が原因でこれだけの勢いで出血していたら既に失血死して いるはず。 では、後腹膜の出血はなぜ生じたのか。 調べてみると、特発性後腹膜出血(SHR)というのがあり 外傷や明らかな血管破綻のない後腹膜への出血のこと。 190例のSHRをまとめた報告によると うち89例は何らかの抗凝固療法中であり さらにそのうちの14例はこれが原因で死亡している。 本例はテオフィリン濃度が高く、抗凝固療法中と同じ状態であ ったうえ 全身の痙攣が激しく起きている。 その痙攣が誘引で、後腹膜のあちこちで小さな血管の出血が生 じ 血小板凝集が抑制されていたために止血されず 相当量の出血量に至ったと推定する。 この症例では輸血開始が午後8時35分と遅れているが これは血液凝固異常のために血清が取れず 血液型を決められなかったため。 今は血漿から決められるようになっているが 当時の亀田総合病院では血清を用いて決定していた。 さらにクロスマッチ時にフィブリンの凝固塊が形成され 判定できなかった。 そうこうしているうちにヘモグロビンが2.9まで下がったた め クロスマッチなしに5分間で24単位輸血した。 しかし午後8時40分、心停止した。 剖検の結果、肺鬱血が著明であり、 死因は急性心不全、ポンプ機能不全が挙げられている。 海外でもテオフィリン中毒の剖検例は多くないが しかし何例かには鬱血の所見が挙げられている。 テオフィリン中毒が死亡に結びつく機序としては 1)コントロール不能な不整脈、しかも、これを制御する薬が ない 2)ポンプ機能不全の急性心不全 の二つが挙げられており 動物実験では、テオフィリンは心筋の壊死を誘発し動物は死ん でいる。 人間でも心筋梗塞を起こしたという例は報告されている。 心筋細胞壊死の原因として テオフィリンによる強力な細胞活性化 か 酸素不足が考えら れる。 以上のような経過を踏まえて判決文に戻る。 ・穿刺部位より約3cm頭側で静脈を損傷し、カテーテルが静脈 外に留置されている可能性が高い。 これに関しては否定する。 ・鼠径部に挿入されたカテーテルの先端が、動脈血管を損傷し た蓋然性が高い これに関しても否定する。 ・前記動脈血管等の損傷による後腹膜の出血が、出血性ショッ クの原因であった 血管の損傷はなく、文章自体があり得ない。 ・(メモ漏れ)血液凝固異常は、血液吸着の施行にあたって抗 凝固剤の使用が不適切であったため?(メモ漏れ) 判決文に矛盾があり、臨床的にも見たことがない ・死亡原因に・・・テオフィリン中毒がこれに影響を与えたこ とを認めるに足りる的確な証拠はない 大変に疑問である。 最後に申し上げたい。 元旦という最も条件の悪い時に 担当医および協力した他科の医師たちは可能な限り治療を行っ た。 担当医は12月31日夕方から1月2日早朝まで寝ずに働いた 。 その瞬間瞬間の判断に大きなミスはないと思う。 しかし救命できなかった。 私にはテオフィリン中毒が死因としか思えない。 次に同じ患者さんが来た時に私たちはどうすればよいのか。 判決に矛盾が多すぎ、仮定の上に組み上げられた空論が多すぎ る。 今回のような事例はヒトで実験するわけにいかないのだから 世の中には分からないことがたくさんあることを認めていただ かないと 医療は成り立たない。 さらに今回は異状死として警察へ通報したにもかかわらず 警察はまったく反応がなかった。 このために病院の中で病理解剖されることになった。 うちの病理解剖では血管は傷ついていないという所見だったの に 判決中では全く無視された。 これが司法解剖されていれば判決は違ったのでないかと残念だ 」 (編者注:文字数の関係で中略:原文は上のリンクを辿って下さい。) 法政大学・中村教授「医学の論理、司法の論理というよりも、 今日のようなオープンカンファレンスを裁判官の前でやったら 判決が変わったんじゃないかと思う。つまり、一番の問題点は 鑑定のありかた、手続きの問題があったのではないか。このケ ースは千葉地裁で、複数の鑑定人に依頼してということでやっ ているが、このケースは、今日は色々な専門家が集まっていら っしゃるが、このケースでは一つの病院の三人に鑑定を依頼し ているというやりかたをとっていて、一つの病院で三人という のは良くわからないが、色々な立場からの議論がそもそもなか った。そして裁判の争点になったのが、死という結果の、何か 原因探しをしていくなかで、見あたるものはカテーテルによる 血管損傷という争点しか見つからなかった。逆にいうと、テオ フィリンの中毒の専門家が鑑定の中にいなかったとおっしゃっ たが、テオフィリン中毒によって何が起こりえるのか、血液凝 固とか出血傾向とか、そういった部分に対して指摘がなかった 。判決にもほとんどとられていない、文献にないと簡単に書か れているだけで、結局何がおこるのか、裁判というのは結果か ら原因探しをして、原因を探してから逆に結果を推定してしま うようなことをしがち。本島先生がその場その場の判断だと言 われたが、裁判というのは現在からさかのぼって、規範的に見 ていきがちで、これができたんじゃないか、と見てしまう。 逆に救急医療は限られた時間でやれることも限られているわけ だから、司法でももう少し考えてもらう、わかってもらう必要 がある。鑑定人が分からないと書きにくいのと同じように、裁 判官も分からないとは書けないので、他に原因がなければ、明 らかに見える原因だけ、このケースならば、カテーテルの血管 損傷ではないかと。血管損傷を一方的な鑑定によるお題にして 、先ほどの説明の外にあるか中かという、なかなか認識し難い 判決になってしまっているというところがある。これから司法 そのままの論理の問題もあるかと思うが、もうすこし鑑定のあ り方みたいなところで、最近では東京地裁あたりでもカンファ レンス方式で複数の鑑定の方がそれぞれ意見交換をする場をつ くって、鑑定をするやりかたもだんだんひろがってきているの で、ただ、テオフィリン中毒の様なそれぞれの専門家が意見を かわさないといけない、しかもそれでもわからないという現実 を突きつけるというか、そういうところで議論を組み立ててい く、そういうところに司法を巻き込んでいくという体制が必要 なように思う」 上「本日は司法系のメディアの方にも声をかけたが、実力不足 か、認識不足か、たぶんここにお越しいただいていない。こう いうことは1歩1歩進めていかないといけないのだが、現時点 は、医療者の中でこういうことをやらしていただいたけれど、 なかなかまだ司法にリーチしていない。今日せっかくメディア の方がこられているので、橋本さんコメントいただけますか? 」 Sonet-m3com・橋本編集長「テオフィリン中毒がどうしようも ないから予想どおりに本当に死んでしまったのか、そこもわか らないから結局司法のほうでは原因をほかに求めてしまった。 じゃぁ、先ほどほかの先生がおっしゃったように、同じ患者さ んが来たときに、本当にどうすればいいのか、これに対する答 えはこの裁判では全然考慮されておらず、先ほど『木を見て森 を見ず』という話があったが、結局、裁判をやっても分からな い。同じ症例を見てもどうと、答えが出ないと、本当に色々示 唆に伴う症例だったのかなという感想を持った。 それでもやっぱり、患者さんというのは、17歳のお子さんを 突然死んでしまったことに対して、なんらかの形で、思いとい うものをぶつけたかったのかと、その結果が裁判になったのか と。その思いは裁判でも結局、たぶん遂げられなかったのかな と思う。結局、医療側にとっても、患者さんにとっても、あま り納得できなかったのだと思う」 高野・千葉県がんセンター画像診断部長 「結局、救急の医者はこれだけカンファレンスをやってもわか らないような状態で実際にやっている。その中で結論も出ない ようなことを一生懸命患者さんのためにやろうというしている 事に対して、その結果が悪かったから、それに対して訴えます としたら、結局防御的になるしかない、医者のほうとしては。 こんなに、専門家をあつめて、それでもわからないというのを 、やっとわかった。そういう状態のものを、救急の場で、それ を解決しながら、理解しながら、治療するなんて、無理。 そういう無理だと思うような場面にあったら、将来的には『も うやらない』という医者が増えるのは当たり前。わからないけ ど、そこのところを一所懸命やってください、治療する努力を してくださいと言わないといけない。 なにしろ、医療なんてわからないことだらけ。わからないから 、毎日毎日新しい論文がでている。結局科学、医学というのは 、今日の常識が明日の常識ではないかもしれないし、わからな いことはがいっぱいあるから、続いている。そこのところをわ かってもらわないといけない。それに、司法の方は後から見て 、こういう風に見えるじゃないかと言って、しかも、それがあ いまいででも、自分たちが決めないといけないから、白黒つけ てしまう。あいまいなときは、基本的には無罪にしてもらわな いと医療はやれない」 上「おっしゃる通り。実は今日こういうカンファレンスをした のは、医療の真相究明をどうやってやっていくか関心を持って いて、現在厚生労働省から、医療事故調案というのがでていて 、非常に議論をにぎわせている。今回はまさに最適なケースと 思った。細かいところは結局ほとんどわからない。今回の鑑定 人の先生も誠実に鑑定しているのだと思う。悪意があったと思 わない。臨床医が鑑定した意見があのような意見で、素人の裁 判官の方は、ああいう判決をだした。現在の医療事故調で検討 されているのは、8条委員会、といまして、有識者の先生が何 人かこられて、意見をいいながら最終的に決断を下していくも の。 神田橋先生の意見とか、すごいと思う。実は入院後のアクシデ ントも起こったかもしれないし、何が起こったかよくわからな いし、様々意見が様々でて、結局まとまらなかくて、おそらく 状況証拠はテオフィリン中毒だろうということで収まると思う 。こういう場を作って、猛烈に沢山の方で、自分が知っている 一番いいと思う方が、多くはここにおられて、これだけの知恵 をしぼっていくと、当初の予想と全く違う意見がでていると。 私がともに考えたかったのは、誰かいいとか悪いとかという議 論をしていない。熟議の民主主義というが、みんなが自分の思 ったことをいって、だんだんコンセンサスを得られてきて。結 局わからないことがあると。 ところが、いまちょうどやられている、誰かに判断を仰ぐって 、鑑定人が8条委員会に代わるだけ。有力な有名な先生が、例 えばCTならある世代がすぽっと抜けているような話が入ってし まえば、こういう問題はまた起こると思う。わたし、どっちも 正しいと思っている。鑑定人の意見も正しいし、我々の意見も ある意味正しい。多様な意見が多様に反映されるような仕組み を作らないと、だれかの意見で決めるような、鑑定人の意見や 8条委員会の意見で医療事故を鑑定する仕組みは私は非常に危 険だと思っている。こういう仕組みをあえて実験としてぜひや らせていただきたいと、思った。 一番最初にいろんな先生のご意見を意見を伺ったのは、プレゼ ンテーターと現場のお医者さんたちは、かなり視点が違う、そ れが一つ一つが、ものずごく重要なポイントをついていたの。 たとえば、どうして普通に正月にきた人に、いきなりテオフィ リン濃度をはかったのか、ものすごいバックグラウンドがあっ たと思う。普通絶対わからないと思うから。たぶんいろんな側 面がこういう話をして出てきていると思う。そういう点に関し て、医療者もメディアも建設的に作っていかないといけない。 こういう医療の真相をどうやって明らかにしていくか、あるい は、一般の方に何がわからないのか、何はわかっているのか、 医療というものは全く不確定で、航空機事故調とは全く違うと いうことを、どうやって言っていくか、その中で、現場はどん どん治療しないといけないことを、いかにして社会に訴えてい くか興味がある。ぜひ、そういう点に関して、会場からご意見 いただけますか」 東大医科研・田中「僕が一番注目している点は、なぜ大量に飲 んだのか。ずっと入院されていて、医療者や医師や看護師や薬 剤師がいろんな方が指導したなか飲まずに、退院した後に薬を 大量に飲むということが起こった。それに気付かなかったのは 、そういう精神的な面についてコンサルトしたりとか、そうい う精神的な面に及ばなかったのか、というのが日常の臨床の限 界なのかということについて、家族も含めて、17歳という年齢 ということも含めて、議論がなかったのかということについて 知りたい」 本島「昨日実は中川先生と夜中に和歌山から来ていただいて1 時間ほど話した。中川先生の一番の疑問はそこだった。なぜこ の子はテオフィリンを45錠も飲まなければならなかったのか 。これに関しては実は裁判のところでは全然ディスカッション もなにもされていない。言い出すといろいろなことを言わなけ ればならなくなって、中傷的なことも言わなければならない」 田中「長い間入院している中に、誰かが高校生の方のそういう ところに気づき、それとリンクして、症状が良くなってこない こと、薬の量を400から600に上げても症状が良くならないとこ ろに誰かが注目できなかったのかと思いう。もちろん限界はあ ると思うが」 本島「それは本当にそう思う。実際は何となく感じていたけれ ども、例えば精神科にコンサルトするとか、そこまではやって なかった」 上先生「この議論は非常に重要だと思う。今やっている議論は 、医療紛争の起こった後のサブサブシステムについて議論して いて、本当は紛争になるまでの話とか、そういうところをもっ としないといけないと思っている。彼は患者学というのを一生 懸命やっているもんで、そういう、患者さんといかにやってい くかというのは、別のところで議論する必要がある。今日はち ょっと違うが、非常に重要な視点だと思う」 駒瀬「私はアレルギーと呼吸器が専門で、この症例はすごく注 目をしていた。今日初めてここにきて、何が起こっているか分 かった。いろんなところでいろんなニュースを見ていても、血 管損傷とか入れたのが悪かったんだろうとか、テオフィリンの 血中濃度が高いのは特異体質だったんじゃないかとか、いろん な情報が錯綜していて、何が起こっているのかさっぱりわから ない。今日初めて、こういう経緯だったのかと納得して、全体 の症例が見渡せた。そういう情報がきちんと伝わってこない。 非常に断片的な情報しか伝わってこず、医療者でもわからない のに、一般の人に理解できるわけがない。やはりその辺も大き な問題があるということを感じた」 久我山病院・峰村「実際に裁判になった後、ごく一部の鑑定人 で意見が決められてしまうという問題がある。事故調とかも作 っているけれど、現実的にはすぐにはできないという状況。例 えば係争中の事件であっても、学会でこのような機会を設けて 、議論をするというのも一つの手なのではないかなと思う。そ れと、法政大学の中村先生にお聞きしたいが、今回の事件を見 ると、鑑定人の選び方にしても、原告側が血内と腎内と放射線 科の医者を希望していて、亀田側は千葉県内の6大学のうち3 つの病院から選択して、しかも、血液学、薬学、腎内、病理、 さらに一番基本の救急医学の専門家を依頼するということをし ていたが、結局選定されたのは1大学の血内、腎内、放射線科 の3人だけだったということがあって、しかも鑑定は書面によ りされただけで、証人尋問がされていない。反論の余地はなか ったと。これを称して千葉地裁では複数鑑定といって、複数と いっても、1大学しかいない。で、そういうものを、複数鑑定 といって千葉地裁は医療訴訟については先進的であると言って いるわけだけれども、こういう現状を、法曹の側から変えてい こうという認識はないのか。もうひとつ、実際問題として、今 これ上告中だが、上告は普通は事実関係については高裁で決定 されたものはもう、普通は覆されないということになっている はずで、よっぽどのことがないと上告は簡単に棄却されると思 っている。何とかして最高裁で受理してもらうというか、高裁 に差し戻してもらうという方法はあるものなのか」 中村「私が答えるのが適当かどうかは疑問だが、複数鑑定につ いては、たしかに千葉地裁は、3人のそれぞれ別々の病院の鑑 定の方にお願いするのを本来の複数検定と呼んでいる。このケ ースは千葉の中でも特殊の、一つの病院の中の異なる専門の領 域の3人の方にお願いしている、それをもって複数鑑定といっ ていると。なぜそうなったのか、よくわからない。たぶんテオ フィリン中毒で、いろんな異なった専門分野の方々が関わらな いと、わからないという、そういう特徴があるというところで 、必ずしも複数といった場合はそういうことが分かる方々のセ ットを何セットか用意しないと、本来の意味での複数にはなら ないのではないかということはおそらくあると思う。で、そう いうことについては、議論はしているのだろうが、限界があっ て、カンファレンス方式で意見交換ということもされているが 、なかなかまだごく一部の裁判所で行われているにすぎないと いうことがある。鑑定のやり方は逆に医療の方から問題提起し ていただいた方がいいように思う。 上告が受理されるということについては、ご指摘の通り事実認 定を単純に争っても上告理由にならない。あくまで経験則の違 反という、法令に違反するようなものがないと、なかなか認め られにくいというのが事実。むしろ最近は最高裁で原審破棄さ れているのが、逆のタイプ、つまり原審で責任が否定されて、 最高裁が責任があるだろうという形で破棄している例がところ どころ出てきている。 今回の場合、1審2審で責任が認められて、経験則に反するで はないか、ということを言わないといけない。臨床現場で、ど ういうことが起こるか分からないということを全体の中で考慮 されていない。カテーテルの血管損傷というような、全体像が 全く見えていないということを、先ほどおっしゃっていたが、 そういう、本来の意味でおかしいところを指摘してというよう な展開が可能なのかそういうことが上告審で扱われている。た だ、救急医療というその問題提起を最高裁は、事実認定を単純 に判断するだけのところという基本的なスタンスがあるので、 世論にほとんど惑わされないということを昔最高裁の判事が言 ったというようなこともあったけれど、最近はそうでもないか もしれない。これについてのやはり、法についての解釈という のが、裁判所の役割とか司法の役割とか、三権分立の中ではそ ういう建前自体も、それはそれとして残っている。そういった 個別の判断の中で、特にこういうよく分らないということを、 どうとらえていったらいいのかということについて、司法の場 でもう一度問い直さないといけない」 耳鼻咽喉科医会・清水「患者さんが一人亡くなったら、原告側 と被告側が証人を出し合ってというこんなことをいちいちやっ ていたら、医療はやっていけない。トラブルのときは一人一人 の意見も違うので、それをいちいちああだこうだとやっていた ら、医療はやっていけない。医者の中で、今度こういう患者さ んが来たらこういうことがあるから気をつけましょうというよ うにやっていくのはいいけれども、いちいち大々的にこういう ふうにやっていくのは、医療はなりたたない」 上「実はこの企画は医学のディスカッションをやりたい、と思 ってやった。ADRとか色々あるが、医学の真相というのはどう やってやったらいいのか、ということでやった。医学の真相究 明の方法は今のように鑑定医だったり、医療事故調査委員会の ようにいわゆる8条委員会のような、偉い先生をあつめて2週 に1回議論するようなやりかたが検討されている。この例でわ かったのは、膨大な専門の先生が時間をかけて議論してやっと 理解にいたるということだと思う。 手続き論として8条委員会をつくるのは可能だが、必要なのは 数多くの先生が時間をかけて議論をする、学会に頼むとか色々 な方法があるが、まず思いついたところから自分たちで始めれ ばよい、そういう提案でやった。医学の議論でも、これだけの 専門家が集まってもわからないことがこれだけある、それが非 常によくわかった。で、学会がやれ、という意見に対して言う と、学会は理事会が決めるので動きにくい。それから特定の領 域の人の発言力が妙に大きかったりするので、様々な分野の専 門家が集まりにくい。別のネットワークでないと出来ないなあ と思う。これが私たちの描いている真相究明機関というかシス テムの一例」 西村「病理解剖の先生が見て血管損傷なかった。それが血管損 傷したと認定されている状況は何なのか。新聞だけみると、テ オフィリン中毒があって、血管損傷もあったのかなと思ってい た。そうじゃないとしたら、事実誤認以外の何者でもない。理 不尽だ」 本島「病理の診断書は裁判所に提出し、病理医も裁判所で説明 した。肉眼的に損傷は全くない。僕も剖検に立ち会ったが血管 損傷はなかった。それを裁判所はとりあげてくれなかった。僕 が思うには、司法解剖がされていたら、必ず取り上げられてい ると思う。司法解剖の診断書なら無視することはない。民間病 院だから馬鹿にされたとしか思えない。病理の先生は警察に電 話して法医解剖が適切だと訴えたが、動いてくれなかった」 上「裁判は、弁護士や裁判官の議論ゲームのような部分がある から、純粋に医学的な議論だけではない部分がある」 本島「でも司法解剖されていたら、判決は違っていたと思って 、納得できない」 高野「千葉県は犯罪関連死で検事が動かないと司法解剖になら ない。承諾解剖は病理医が行うので今回と同じだが、できれば 違った病院だったら良かったのだろう。一県一医大のところも あるわけで、いわゆる現在の異状死(原因不明、医療関連死) に対する司法解剖の裏付けがなくて、剖検率も低くて、そのし わ寄せでお互い嫌な思いをしている」 埼玉筑波病院・籏野「今回は、亀田総合病院というすぐれた病 院の例で、証拠もあり、誰が聞いても医者は腹が立つ。しかし 日本の現状を考えると、先ほどマスメディアの方が『家族の気 持ちを考えると問題じゃないか、どうでしょう』とおっしゃっ たことに対する医師の答え方を見ると、医師だから自分の立場 を守るというか、萎縮医療になっていかん、医者はやれないと いうことが強調されたお返事の仕方の中に、医者が隠そうとし ているのではないか、守ろうとしているのではないか、という 不安が感じられるのではないか、患者が医者より弱い立場で訊 きたいことを訊けないということもあるわけで、患者が納得い かないことを納得させるような、受ける体制があることが大切 。一般の検査も証拠保全もできないところで亡くなった場合に どうしたらいいんだろう、このほうが数は多い、大多数の病院 が人手もなく体制も不十分な中でやっている。それらをどうす れば良いのか。ドクターも守り患者も納得がいく体制というの は非常に難しいと思う。どうしたら良いのか、非常にわだかま りがある」 高野「亀田総合病院はベストの事をやったのに訴えられる、カ テーテルを入れたらちゃんと写真を撮っている。普通の病院で 色々やるべきところをやっていなかったら仕方がないかもしれ ないし、低いレベルのところでこの判決なら萎縮医療とかそこ までは言わない。当時できることをすべてをやっても、司法で は認めてもらえない、となると萎縮医療になるしかないと思う 。今日いらしている皆さんに伺いたい。亀田以上のレベルの医 療でこの患者さんを助けられたと思う? 思わないはず。ここ までのことを言える段階まで持って行ってもなお負ける。であ れば、ほとんどの80〜90%の病院は治療するな、ということと 同じ。曖昧な情報しかなければ萎縮医療になるとは言わない。 ここまでベストのことをやっても、訴えられたら負けるのか、 という疲労感があるということ」 籏野「よくわかっている。今の制度、法律の制度、二審で決ま ったら法律上の手続きだけが問題で医学の肝心なところが話題 にもならないという、法の制度に問題があることがわかって、 びっくりもしたのだが、これでは勝ち目がない、法律の制度自 身にも手をつけなければならないこともわかった。 先生のおっしゃることはよくわかるが、医者が患者に対応する ときには、イギリス、ドイツでもあるように、上先生が既に提 案してこられたように、病院の人と患者さんとがじっくり話す 。これが大事。これだけ説明されたらそれで患者さんもわかり ました、と理解されたと思う。それで納得できなかったら、次 のステップは裁判で話し合う、それでダメなら、となると良い のだが、今はいきなり司法がからんでしまう。ここを変えない と、患者は文句も言えないと。しかし私は、患者の気持ちを医 者が考える余裕があると良いと。医者が自分たちのプロフェッ ションをこれでもか、とおしつけてくると患者さんも納得がい かないのではないかと。医療者も国民の納得が得られるように 十分注意深く対応していかないとならないなと思う」 上「おっしゃる通り」 別府市の中村医師「私はネットでみて来た。来た理由は亀田総 合病院の症例であることが一つあった。今日聴いてわかった事 実がたくさんあり、カテーテルの問題。これがそのまま通って しまったら、先ほど小児科の先生が言われたように大変なこと だと思う。裁判では原告被告の弁護士も裁判官も医療のことは 全くわかっていないので、係争中の原告・被告、裁判官にこの ようなカンファに来てもらうとよい」 JR東京総合病院・小林「昨日病院評価機構のバージョン5がや っと終わった。私も委員として苦労した。膨大な説明書と同意 書をとることになっている。今回の症例でCV入れるときにも同 意書を取っているはず。今回CTの説明の通り血管に入っている と思うが、万が一、百歩譲ってCVが原因だったとして、その同 意書が裁判で全く役に立たない。機能評価であれだけの労力を かけさせるのなら、司法とネゴをして、同意書が免責の要件に なるようにしてもらわないと、あれだけ膨大な説明と同意書を 整える意味がない」 上「厚生労働省の省内の議論なので、法務省は関係ない」 神田橋「最後に、同じ症例がもう一度来たらどうするか。FF P入れながらどこかに運ぶのか。亀田さんは三次だから違うか もしれないが、ウチのような二次病院に来たら、ヘパリン投与 しながら三次救急の病院に転送するしかなさそう。具体的には どうするのが一番良いか」 本島「これは我々も、凝固異常が何で起きているのかわからず 、ご家族にも説明のしようがなかった。もし今度同じような方 が来られたら、これまでの症例報告をみても、それだけの血中 濃度でしたら、100%の方が亡くなっていますので、助かったら ラッキーだと思って下さい、と説明して同意書を取ってから治 療開始するしかない」 神田橋「いや、救うにはどうすればいいか」 本島「FFPは入れても良かったかも、とか、輸血も早く始めれ ば良かったかもというのはある。ただし、輸血はO型をクロス マッチなして開始するということは検討されるが、O型MAPに含 まれる血漿成分から何か別の事故が起こるかもしれないので議 論が必要だと思う。吸着は行うしかない。凝固亢進があるとヘ パリンは少量からでも使わざるを得ない。そうすると細部は違 っても、同じような治療となると思う」 神田橋「結局は同じ治療方法。我々のような専門外の内科医だ と、ヘンな徴候がでてきたら、どこか他の病院に送るしかない ということになる」 石崎「臨床薬理学的には、テオフィリン中毒単独では、過凝固 の報告はないので、わからない。レビューでは、アメリカでは 、テオフィリン中毒では最初に胃の中に活性炭を飲ませて腸管 からテオフィリンを吸着させます。カラムも活性炭のカラムを 使う。普通の透析じゃ抜けない、かえって体の組織からテオフ ィリンが血中に出てきて血中濃度があがってしまう。又、成書 にあるが血小板減少に注意が必要。もう一つは、痙攣に対して 、フェノバルビタール、フェニトインは効いたという証拠がな い。ジアゼパム、ロラゼパムは有効ではない。唯一バルプロ酸 は皆さん使われていない。将来検討してみると良いのではない かと思っている」 上「これが我々が抱いている、医療事故の医学的な真相究明。 この議論の中に、亀田総合病院の何々先生の重過失と判断する とか、訴えるとか、そういう議論をしている人は誰もいない。 バルプロ酸を使うのはどうかという、専門家からの再発予防策 の提案もなされた。これからの医療安全のため、再発防止策を 考えるための医学的な真相究明では、法的な判断とか、過失を 問うとか罰則を科すとかいう観点をどけないと、議論ができな い。医学的な真相究明をするには、このような専門家が多数集 まる議論をどんどんすることだという提案として、このような 会をさせていただいた」 駆け足だったが、どのような感想を抱かれただろうか。 全国で救急医療の崩壊が起きている背景に こんなトンデモない訴訟があったこと それなのに今までほとんど国民に知らされていなかったこと 何より多くの人が被害を被っていること もっと国民は怒るべきだ。 明日は我が身かもしれないのだから。 (了) ************************************* 国家公務員共済組合連合会 熊本中央病院 放射線科 鈴木(阿部)保子 ************************************* |
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”医療訴訟での裁判官の判断が医学的におかしい”例を検討する、という内容ですね。 |
××× 2008/03/03 07:42 |
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